こちらでは、なかなか分かりづらい自然派ワインについて、次の4つについてご説明します。
○自然派ワインとは
○自然派ワインとオーガニックワイン、ビオワインとの違い
○酸化防止剤(亜硫酸塩)について
○オフフレーバー
基本的にすべてのワインは、ブドウを絞りその果汁を醸造して(=酵母の働きでアルコール発酵させる)造られます。
つまり、ワイン造りには大きく2つの過程があります!
1.ブドウの栽培
2.ワインの醸造
自然派ワインとは、
はっきり決められた世界的なルールはありませんが、
1.ブドウの栽培 2.ワインの醸造
の両方の過程で化学物質を使わずに、
人為的介入もなるべくせず、
自然に近い状態で、ブドウや土壌の個性を最大限に引き出すように
造られたワインです。
自然なブドウの栽培とは、
化学肥料、農薬、除草剤などを使わない。
ブドウの収穫は手作業(機械を使わない)で行う etc
代表的なブドウの栽培方法は、
◆ビオロジック農法
→有機農法。化学肥料や農薬を使わない。
◆ビオディナミ農法
→オーストリアの自然科学者のルドルフシュタイナーによって提唱された農法。
有機農法をベースに、月などの天体の動きといった生体エネルギーに配慮して栽培
を行い、特有の鉱物や植物で作った天然調剤を適切に使うことで、農作物や土の生命力が
高まるとされています。
●自然なブドウ栽培には大きなリスクが伴います。
ブドウを育てるのは厳しい自然との戦いでもあります。
その年の天候によって全滅の恐れもある。。。
化学物質を使用しないことにより、病虫害などで収穫量が大幅に減るかもしれない。。。
人為的介入をしないことで膨大な手作業が必要になる。。。
●それでも、生産者は有機栽培を貫く意思を持ち、惜しみない努力を重ねています。
農薬を使えば、土壌の微生物や生態系を破壊して、畑がやせてしまう。。。
化学肥料を使えば、ブドウの根が地中深くまで伸びるのを阻害して生命力の強いブドウが育たない。
農薬・化学肥料を使い続ければ、次世代に引き継ぐ前に畑はダメになる。。。。
ワインの出来はまさにブドウ!次第!!
生産者は健全で健康なブドウ造りに励んでいます。
自然なワインの醸造とは、
◆自然(野生)酵母で発酵
→人工的に作られた培養酵母は使わず、畑やセラーに存在する自然酵母を使用。
その為、ブドウが育った土地のテロワールが反映されます。
◆添加物は必要最小限の亜硫酸(SO2)のみ、または無添加
→渋み成分であるタンニンや酸味などの人工物の添加や処理を行わない。
また、清澄やろ過(フィルターなどを使って、酵母の死骸などの固形物を取り除く作業)
は、酸化のリスクが増すため行われないことも多いです。
最近では酸化しにくい方法でろ過をし、澄んだ味わいの自然派ワインが作られることも多いです。
●自然なワインの醸造には大きなリスクが伴います。
自然な醸造は人的なコントロールを行わない為、発酵に時間がかかったり、
バクテリアによる発酵中の果汁汚染の危険、品質不良とされる匂いが出やすいなど、
腐造と隣合わせです。
そして、自然派ワインは非常にデリケート、
出荷からお客様の手元に届くまでの品質変化の危険性も。
それでも生産者の懸命な努力と研究により、自然派ワインにしか出せない味わいのワインが造られています。
*自然派ワイン以外のワインは、大量生産、品質安定のために、化学物質添加や
人為的介入をすることで、発酵や味わいなどをコントロールしています。
オーガニックワイン、ビオワインとの違い
オーガニックワイン、ビオワインは、
栽培は有機栽培ですが、
醸造の段階で培養酵母や添加物を使用しているので
自然派ワインとは全く違うものです。
酸化防止剤(亜硫酸塩)について
・酸化防止剤はワインの酸化を抑える効果がある物質の総称で、ビタミンCやビタミンEも含まれます。
・亜硫酸、亜硫酸塩、SO2、二酸化硫黄など、似たような名前をよく耳にしますが、
これらは物質の形状が違うだけで、大体同じものを意味しています。
・自然派ワインでは、発酵中のワインをバクテリアから守るため、出来上がったワインの
品質安定のために、醸造時や瓶詰め時に極少量添加されることがあります。
●自然派ワインと通常ワイン(亜硫酸添加)の味わいの違い
・亜硫酸をワインに添加すると味わいにメリハリが出て、輪郭がはっきりするといわれています。
その為、通常のワイン(亜硫酸添加)を飲み慣れた人が、自然派ワインを初めて飲むと、薄いと感じる人も多いようです。
逆に自然派ワインは過度な添加や処理を行わない為、身体に染み込んでいくような優しい飲み心地と、豊かな奥深い味わいが生まれます。
・さらに、自然派ワインは発酵の段階で多種多様な自然酵母の影響があり、どの酵母が優勢になるかで味が変化するのも面白いです。
ただ、味わいに関しては個人の好みですので、何が良くて何が悪いというものではありません。
●亜硫酸のラベル表記について
ワインは醸造時のアルコール発酵の際に、微量(5〜15mg/L)の亜硫酸塩が自然生成されます。
EUの食品表示ルールで、1Lあたり10mg以上の亜硫酸が含まれるものは、
人為的に酸化防止剤を全く添加していない場合でも、表示することが義務付けられています。
その為、ラベルだけで自然派ワインかを判断するのは難しいです。
●やっとINAOが認めた!
ヴァン・メトード・ナチュール(自然派公式認証)について
自然派ワインにはっきり決められた世界的なルールはないですが、
2019年10月にフランスで生産者、販売業者及び消費者によって確立されたヴァン・ナチュール保護組合(Syndicat de Défense des Vins Naturels)から「ヴァン・メトード・ナチュール」の憲章が発足。昨今広がるナチュラル(自然派)やビオの基準は曖昧なものが多いため、協会独自の基準を設け、基準を満たすワインに認証マークを付けるようにしました。
そして、2020年よりINAO(国立原産地名称研究所)、フランス農業省、フランス競争・消費・詐欺防止総局(DGCCRF)によって、試験的にこの自然派公式認証が認められました。
亜硫酸(SO2)の添加量によって2つのマークがあります。
1.亜硫酸(SO2)無添加のワイン
→マーク右下にsans sulfites ajoutésと表記
2.亜硫酸(SO2)最大30mg/Lまで添加されているワイン
→マーク右下に30mg/L de sulfites ajoutésと表記
左:無添加マーク 右:30mg/L以下
認証条件は以下です。
・オーガニック栽培認証ブドウのみを使用
・収穫は厳選して手摘みで行う
・製造地域由来の野生酵母のみの醸造、添加酵母は不可
・亜硫酸総添加量、30mg/L以下(赤白ともに)発酵前、発酵中の添加は不可
・濾過、補糖、補酸、補タンニン、逆浸透膜など醸造における人的介入の禁止
*ちなみに・・・EUの法律では「オーガニックワイン」の総亜硫酸の規定量は、
赤 100mg/L
白・ロゼ150mg/L
甘口ワイン220mg/L
ですので、その差は歴然です!!!
(もちろん、規定内であれば亜硫酸に害はありません)
オフフレーバー
何らかの理由によって生じたワインの不快な臭いのこと。
様々な理由で欠陥と見なされる香りが
ワインについてしまう事があります。
でも、多少のオフフレーバーは少し癖のある匂いであっても、
それを覆う果実などの香りがあれば、綺麗に重なり合い素晴らしい美味しさになります。
ただ、極端に異臭がするのは醸造に失敗したワインです。
明らかに異常な味わいでなければ、
オフフレーバーも個性の1つ!ワインに複雑味をもたらします。
よく言われるオフフレーバー
◆ブショネ
カビ、湿ったダンボール臭などと言われます。
コルクがバクテリアや菌に汚染されるのが原因。
◆揮発酸(きはつさん)
ツンとした臭い。酢や除光液、セメダイン臭などと言われます。
酢酸菌によって汚染されることが原因。
◆還元臭(かんげんしゅう)
卵の腐ったような臭いなどと言われます。
酸素不足が原因。デキャンタージュなど、空気に触れさせると解消できます。
◆マメ臭・ねずみ臭
豆やポップコーンの香りと言われます。
腐敗酵母や、製造段階で特定の乳酸菌の代謝活動に関連していると言われます。
◆ブレタマイセス
馬小屋、農場臭、プラスチック臭などと言われます。
ブレタノミセスという酵母によって生成されます。